上陸特別許可(入管法12条)とは、退去強制手続により本国に帰国した外国人を入国禁止期間中に日本に呼び寄せるための手続です。具体的には、①不法就労などで逮捕され、退去強制手続によって帰国した場合や②自分で在留特別許可の嘆願を行ったが、それが不許可となり、配偶者が帰国させられてしまった場合などに、5年間(又は10年間)の上陸禁止期間が経過する前に日本への入国を強く希望する場合に与えられる許可です。
具体的には、退去強制から2~3年が経過しており、夫婦間に日本国籍の子供がいるような場合には「上陸禁止期間5年」が経過しなくても許可が与えられる可能性があります。
ただ、この「上陸特別許可」は、在留特別許可と同様、入管法で定められた手続ではありません。本来であれば、入国できないはずの外国人について、「法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認められる場合」に与えられる許可にすぎません(法務大臣の裁量的処分)。そのため、申請すれば必ず許可が下りて日本に入国できるというものではありませんし、場合によっては、何回申請しても許可が下りないという場合もあるので、注意が必要です。
上記の通り、上陸特別許可は法務大臣の裁量的処分であり、その判断にあたっては個々のの事案ごとに、①上陸を希望する理由(入国目的)、②該当する上陸拒否事由の内容(退去強制事由の内容を含む)、③上陸拒否事由が発生してから経過した期間、④我が国に居住する家族の状況やその生活状況、⑤内外の諸情勢その他諸般の事情を加え、その外国人に対する人道的配慮の必要性と入管法第7条第1項に定める上陸のための条件に適合しない者に及ぼす影響とを含めて、総合的に考慮されています。
そして、入管法上、この上陸特別許可は上陸港において「入国審査官による審査→特別審査官にによる口頭審理→法務大臣に対する異議申立て→裁決」の手順で行うよう定めていますが、実際は次の「上陸拒否の特例」により、地方入国管理局に対する在留資格認定証明書交付申請を行う方法で上陸特別許可が得られます。
上陸拒否の特例(入管法5条の2)とは、「入管法5条に規定する上陸拒否対象者であっても、法務省令に該当する者で、かつ相当と認めたとき、法務大臣は上陸拒否事由に該当することのみをもって上陸を拒否することはできない」という規定で、これによれば、12条に規定する「入国審査官→特別審査官→法務大臣」の三段階の手続を経ることなく許可を得ることができます。
例えば、過去に退去強制された外国人が日本人との結婚を理由に在留資格認定証明書の交付申請を行った場合、審査の結果、無事に在留資格認定証明書が交付されれば、本来の上陸特別手続を経ることなく日本に上陸することが可能となります。